季刊五術より その14
「傷官」考 (命) 佐藤六龍著
季刊「五術」平成6年2月号掲載文から抜粋 後編
話は変りますが、日本の一般のインチキ四柱になりますと、この傷官を、字づらだけ
からとらえています。
大阪の遁甲の講師をしていただいている、あの山内久司先生(必殺シリーズを作
った方)が、京都の四柱の先生から、「山内さん、あなたの生年に傷官があるから、
先祖は首切り役人だよ」(時代劇の神さまに向かってです)と言われたとのこと。
傷官から首切り、という発想、中国と比べて、なんとおそまつな事でしょう。
もちろん、日本では喜忌をいいませんから、傷官の凶さをいったつもりなのでしょうが、それにしても首切りとは味のない言葉です。『子平典故』では、忌神の傷官が強ければ「三紙無驢」としています。
日干を洩らす凶兆が強いのですから、無駄な事をする、余計な事をする、意味がない、という象意です。
中国の南北朝時代に美辞麗句でつづる駢文体が流行しました。当時、ロバは安物でしたが、学者がその安物のロバを買うのでも、その契約書を三通も駢文体で書き、それでいて、その三通の中に一字もロバの字がない、無駄な文章だった、
という事に由来して、徒労、無駄な事をする、要領を得ない ― という忌傷官に
「三紙無驢Lとしたものです。
㊟べん‐ぶん【駢文】
〘名〙 (「駢」は馬を二頭並べること) 漢文の文体の一つ。四字と六字を一句の基本とし、対句を多用する華美な文体。
喜神に「紙貴し」、忌神にやはり紙をもってきて無駄な契約書というのも、にくいではありませんか。
同じ忌神の食神、これも日干を洩らすのですから、やりすぎ無駄ですが、『子平典故』では「画蛇添足」とあり、蛇を書いた人が、時間があまったため、つい蛇に足を書いてしまった、という故事にのっとり、忌神食神を説いています。
『子平芸海』は典故とちがい、人物の命式を説明するのに、その人の一代の吉凶の特徴と業績をわずか四文字で表現してあるのです。しかも、何故にこの吉凶が出たか、を子平の干関係と喜忌で説いているのです。
孔子の一代の特徴を聖人と説かないで、「喪家之狗」 としてあるあたり、占術家としての目の鋭さがうかがわれます。
孔子は諸国を演説にまわっている時に、乞食とまちがわれた事が度々あります。それを、飼い主を失った犬にたとえるあたり、すばらしいではありませんか。そして、その理由を「化金帯甲」云々としてあります。従旺的化金格なのに、甲木の忌財の病があるという意です。
『子平典故』といい、『子平芸海』といい、文化発生の国でなくては、という感のする貴重な占術文献です。