五術

季刊五術より その17

【 運命の作用(命)】     佐藤六龍著

季刊「五術」昭和56年掲載文から抜粋 前篇

私が五術を講習しだしてからちょうど十一年目になります。その間、いろいろの事がありましたが、現在もただ一つ残念な事があります。それは、どうして運命学に興味を持つ人は、非常識なのだろうという事です。

これは、その人たちの人格や学の有無とはまったく関係なく、五術を習いにくる人は、「正しい思考力・ありふれた常識性」に欠けているのです。私にはこれが不思議でなりません。思考力と常識性がなくて、どうしてこのきびしい世の中を渡っていくのだろう、ということです。

この正しいものの見方、考え方ができない人は、いかにすばらしい五術を修得しても、応用する事はできません。中国の五術は、この思考力を持ち、常識性のある人が活用して初めて花が咲くものなのです。

この思考力と常識性は、占術を応用する場合に、適中不適中を大きく左右する事になりますし、占術の限界を見きわめる事に非常に大切な事となるからです。

よく、大地震などの大災害で死亡する人はすべて、その命が短命なのかという事をいう人がいますが、これなどはこの二点が欠けているからこうしたおろかな考え方をするのです。

命というものは個人ですから、個人の吉凶が、大自然の吉凶にかなうはずがないくらいは、運命学をやらない人ならわかりますが、運命学をやる人はこれがわからないのです。

ここで人間の運命の作用について少し究明してみましょう。これについては、明確に『四柱推命術密儀』の書にありますから、ぜひご一読ください。

人間の運命に作用をあたえるものは、遺伝・生辰・玄影・経験の四作用です。作用の強さからいいますと、①経験 ②生辰 ③玄影 ④遺伝 の順になります。

経験とは、過去にやった事、起った事、現在おかれている環境などの常識的な事がらです。生辰は、生年月日時で命の事です。玄影は未科学的な要因で卜と相にあたります。遺伝は字のとおりです。

ここで占術を研究する人がぜひとも覚えていただきたい事は、この経験が生辰より優先するという点です。戦争や大災害は多くの人が死ぬという経験の前には生辰の命は一個の価値もないのです。長寿の人が酒によって線路に寝ていればひかれて死ぬのは経験であって、命の長寿の作用によって電車が止まる、などという事は絶対にありません。

ところが占術を研究する人は、常識と思考があやふやですから、命がよかったら大災害にあわないのでは、電車が止まるのでは、という経験を無視した常識の欠如をいうのです。

いちばん人間で問題になるのは結婚の経験です。配偶者ぐらいこの経験に左右され、自己の自由意思と趣味嗜好によって選定できるものは他にありません。例えば、貧富はいかに自分の意思でも金持ちにはなれませんし、寿命も同じです。

ところが配偶者だけは、自己の意思によりどうにでもなるのです。

つまり経験(広い意味の経験)によって命を左右してしまうのです。

例えば、Aタイプの女性と結婚する命をもっていても、Bタイプばかりの職場にいたら、命に反し経験が左右してBタイプの女性を選んでしまうのです。