五術

測字のお話(5)

其の1
乳母が五歳の子供の病気について「亥」の字を書いて占いを乞いました。
占者は「亥の字は、孩の字の子のない象、亥を分解すると、上は六にならない形、
中は久にならない形、下は人にならない短い形、この子供は凶多くて吉少ないゆえ、
六歳にはなれないだろう」と。
乳母はあきらめきれないで「一」の字を書いて再び問いました。
「一は、生の字の最後の字、そして死の字の始め、ましてこの一字は十字の半分の形、
五歳が寿命であろう」と。
乳母について来た男が「水」の字を書いて、やはり子の生死を問いました。
「水の字は、永久の永にならない形、五行の数で言えば土は五、土が水を剋す、
ゆえに五日をすぎずして死亡するであろう」

其の2
戦いにのぞんで身分の低い将が、占師に「盆」の字を書いて吉凶を問うたのです。
占師は「”八日刀”の下に、”血”を見るの象、大凶」と。
その将は、おそれて逃亡してしまいました。将軍は戦いに出て、逃げた将をとりこ
にして帰り、斬首の刑に処したのです。その日はちょうど八日目でした。
大将は占師を、軍をまどわした罪としてとらえ、「汝は今日のこの自分の禍いが
ある事が、占い師のくせにわからなかった」と問いただしました。
占い師はおそれいりながら「どうか将軍さま、一字をもって決めていただきましょう。」
と言い、字を書くことを将軍に求めました。
将軍は「梓」の一字を書きました。
 占師は「木へんは”杖”、右側の”辛”は”六十”。まさに杖罪六十(杖で六十たたく罪)の象」と占ったのです。
将軍は「お前は三十の杖たたきだ。お前の占いは六十杖というからはずれだな」と笑いました。
「梓」で六十の杖たたき、というのに対し、罪一等を減じ、三十杖にし、「不的」と笑ったのは、実にイキな将軍といえましょう。

其の3
ある人が「火」の一字を書いて「家にいたほうがよいか? 外に出たほうがよいか?」を問いました。
占者は「家を出たほうが利がある。字形は下のほうの脚が開いたもの、自らが外に出て行動したほうがよい。
家にあったなら災があるだろう」と。
それを側で見ていた人が、その「火」の字をさし、「子供が貴人と一緒に北京に行くが、その同行の可否を問う」
と占を乞いました。
「これは大利である。他の人が書いた火の字を再びさして、すなわち”火を二つ見る”で炎となる。北京は北で
あって水とする。水火既済の易卦で利がある」と。