測字のお話(4)
其の1
ある人が「長」の字を書いて、馬を購入することの可否を問いました。
測字者は、これは「馬龍ニ化ス」象ナリ。千里の駒であるからよろしく、この馬がよい、と断じました。
馬を買うという問で、長の字が龍の右側に似ているために、”馬、龍に化す”としたのです。
さらに「長」の字の下(つまり足)の字が「良」になっているから、足が良い馬といえる、と判断しました。
果たして走るを得意とした良馬でした。
其の2
ある人が失物の占を願いました。「牆」の字を示しました。相字者は曰く、
「左側の爿(しょうへん)は、牀(寝台)の字のつくり、また右側は、面・来の二字が見えます。
よって牀の下を尋ねれば、必ず得られよう」と。
その問占者は大笑いして曰く、「紛失したものは一頭の馬である。どうして牀の下にかくすことができようか?」
相字者曰く「馬は得られなくとも、その馬を盗んだ者の顔(面はよく見ることができるであろう。
その人は早々と家に帰り、妻の部屋の牀の下を見たところ、一人の少年を見つけました。
馬盗人とし、物を盗む意ありとして官に届け出ました。
その少年は弁明し、「馬はすでに連れ帰って別な所にいる」というので、その人はそこに行きますと、果たして、その失った馬がいました。その少年をせめますと、妻の密通の相手だとのことです。
その少年は昨日来て馬を盗んで帰った。そして今日また馬に乗って女の所に来、別な所に馬をおき、部屋で女と仲良くしていると、突然夫が帰って来たので、逃げきれず、牀の下にかくれたのだ」―
とのこと。相字者の言は少しもたがわず、そのわざは、神わざといえましょう。